「レインボー計画」予告編:村越英樹

一昨年9月に本サークルに入会し、初めての記事投稿となります。村越ですよろしくお願いします。

写真を趣味とするものであれば、PLフィルターはご存知でしょう。そう、水面に反射する光をカットしたり、青空がより青く写ったりするやつ。PLフィルターでは、偏光という光の性質が使われていて、ある一定方向に振動する光だけを透過させます。写真は、安価な偏光板2枚を重ねて、青空にかざしたものです。左端は光の振動方向を2枚の偏光板で並行にしたもの。右端は光の振動方向を直行したもの。振動方向が90°異なるので、光が透過しません。

 

 

 2枚の偏光板の間にSDカードケースを挿入すると、写真2のように虹色に発色します。2枚の偏光板が透過させる偏光が、並行であっても、直行であっても発色しますが、直行の方がより発色を確認しやすくなります。虹色の発色は、SDカードケースのひずみ等が現れたもので、構造色(偏光縞)と呼ばれています。

 

 

 

 構造色として、より一般的に確認できるものとしては、右側の写真のCDのように、微細構造により光が反射、干渉、回折して、特定の色の周波数が強調されるものがあります。左側の写真は、簡易暗室で撮影したSDカードケースです。

 

 

どちらの構造色も、虹色でとっても綺麗ですよね。ということで、こんな色に発色する水中生物等の写真を撮り、水中映像祭の作品としたいと考えました。CDのような構造色は、通常の光で発色するので、光の当て方次第で撮影できるのですが、SDカードケースの発色(以下、偏光縞と記載します)は、光源側とカメラ側にそれぞれ1枚ずつ計2枚の偏光板を使い、透過光を撮影するものなので、少々厄介。そこで、写真4のように、偏光板を切り抜いて、1枚をストロボ、もう1枚をカメラのレンズに張り付けた。この状態でハウジングに入れて、テスト撮影として、CDおよびCDケースを撮影してみると、写真4右端のように、なかなか良い感じ。ストロボから発射された偏光がCDケースを透過して、CDケース境界面に反射した光を捉えて偏光縞を撮影することができた。

 

 

 

実際に水中で撮影した写真は、次の写真はカマスですが、綺麗に構造色を撮影することができました。こちらは、ウロコの微細構造により発色しているCDタイプの構造色だと推測できるので、通常の撮影でも撮ることができそうです。ただ、魚のウロコ自体は、偏光縞を発色することが知られているので、一度ウロコを透過した光が、ウロコ裏側の境界面に反射して発色していることも考えられるのかなぁ。。。このあたりは、はっきりしない。

 

 

 

エソですが、目の部分の拡大写真を見ると、偏光縞のような発色が確認できます。角膜や水晶体を透過し、反射してきた結果の偏光縞ではないかと考えます。

 

 

 

クルマエビも、カラの部分を透過した光がその境界面で反射して、偏光縞を発色しているものと考えられます。

 

 

 

 このように、いくつかの水中生物で構造色を確認できたのですが、当初の目論見では、写真のような透き通った生物に色がつくことを期待していたんですよね。とっても残念。

 

 

ということで、ネタ不足のため、今年の第33回水中映像祭への出品は見送り。かなり悔しいので、来年こそはと、実験を続けています。写真9は、水中で撮影したSDカードケース。左側:砂地バック、右側:黒い土嚢バック。砂地バックでは偏光縞が確認できない。右端の写真では、水中を想定して、薄暗い部屋でロクハンのウエットスーツバックで撮影したので、良い結果が得られたことが確認できました。

 

 

 

改めて白バック、黒バックの写真を陸上で撮影した結果、写真のようになりました。白バックで撮影した写真は、白い背面に反射した光の偏光状態が変化し、かつ光量が多いため、偏光縞が確認できません。一方、黒バックの方は、背面からの反射光が無いため、SDカードケース裏の境界面に反射した光が偏光縞を作っていたことを確認できます。そうか、黒バックにしないといけなかったのか。次回から、①黒いアクリル板を持って潜るかなぁ。。。?

 

 

 

 黒バックにするのも一つの方法だが、通常の偏光観察では、被写体の背面に光源を置いて、透過光を撮影しているので、試しにやってみたのが、写真の左側。この方法だと、②水中でストロボを外して、被写体の後ろにもっていかないといけない。シンクロコードが延びるかなぁ。。。? 写真の右側は、白い紙の上に偏光板を置き、その上に被写体、カメラの手前に偏光板を配置し、通常光をカメラ手前の偏光板を通さずに撮影したもの。そうか、③白いアクリル板に偏光板を貼り付けて、通常のストロボ光を当てて、撮影すれば良いのか。。。? などと対策を考えてみた。

 

 

①、②、③いずれの方法でも、水中でやっていると、かなり怪しい人だと思われるだろうなぁ、と思いつつも、来年(2017)415()に予定されている第34回水中映像祭には、作品「レインボー計画」を発表したいと考えています。ちょっと変わった作品になると思いますので、ぜひ会場までお運び頂き、作品の感想を直接お聞かせいただければ幸いです。

写真記事 投稿:村越英樹

P.S. 2016年カレンダー11月のメッセージは意味不明だったと思いますが、本当に虹色を狙っていたんですよ。